のうこん

私は田舎から都会に出てきた。
私の田舎がどれくらい田舎かかというと、電車が1時間に1本だけというレベルの田舎だ。都会に出てきたら電車が何本も何両もあり、人の多さに少し辟易した。

しかし電車があるのもなかなかに便利だ。田舎では車がなければどこにもいけなかったけれど、電車がたくさんあるから車が無くても困ることはない。普通にエコだと思う。

毎日同じ電車、それも同じ車両に乗っていると、顔見知りの人が生まれてくる。いつも先頭車両に乗っていたその子たちは、私たちが降りる駅を覚えていた。私たちは隣どうしで座っていたから、私たちが降りる駅になったらその子たちは近づいてくる。私たちが降りるとその席にはその子たちが座れる。いい関係だった。私たちが隣どうしで座れたら、その子たちにとって座れる席が確定しているようなものだったのだ。

しかし私たちはもう付き合っていないから、別々の車両で乗っていっている。私はあの子たちが確実に座れなくなったことが残念だった。なんで残念だったのか考えてみると、あの子たちが座れなくなったということは、私たちも一緒に座れなくなったということに他ならないからだ。やはり自分本位なのかな、と少し反省する。

たまにあの子たちの顔をみたいと思うけれど、きっと別れたと思われている。あの人たちいなくなっちゃったね。男の人はこっちに乗ってきてるのに。

そう、私たちは別れたの。
けど好き合ってるの、内緒だよ